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ヒポクラテスの誓い
“Do no harm(害を与えてはならない)”という考え方があります。これは、医師が医学生の時に学ぶ、ヒポクラテスの誓いという医師の心得の中心になる考え方です。私はこれをとても大切にしています。
先日、7歳の女の子が蓄膿や気管支炎の状態で、小児科以外のクリニックでCTを撮られて治療を受けて良くならずに当院に受診されました。CTは、詳しい画像情報を提供してくれる一方で、レントゲンの数十倍の放射線量があります。さらに子どもは大人に比べて放射線に対する感受性が数倍高く、適応を考えるときはより注意が必要になります。もちろん被ばく以上にCTが有益な場合もあります(盲腸や頭の中の出血、がんなどはCTで詳しい情報を得る利益が上回ることがあります)。しかし、丁寧で根気強い診療で無駄な被ばくを回避できるのであれば、子どもはその方が有益だと思います。
小児科医は”見て、聞いて、触る”ことを中心とする子供の内科医なので、必要ない画像検査は行いません。同時に、迅速検査も不必要なものは子どもの害になると思います。私たち小児科医は、毎日感染症の子供たちを診療し続けています。インフルエンザ、コロナウイルス、RS、ヒトメタニューモウイルス、マイコプラズマ、溶連菌など、多くの感染症の知識を教科書や専門書で学び、アップデートしています。さらにこの地区の子供たちの流行状況や傾向、特徴なども経験や知識がどんどん集積されていきます。その中で、目の前にいる子どもの特徴から迅速検査が必要かどうか、必要な検査があれば最低限行い、どんな診断でどんな治療が最適かを考えています。
コロナの流行以降、必要ない”鼻の検査”で、診察自体がトラウマになっている子どもがたくさんいます。”Do no harm”の心得を大切に、子どもの気持ちに寄り添った、子どもに害の無い診療を続けていきたいと思っています。